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小田島孤舟

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岩手歌壇の父。小田島孤舟

岩手歌壇の父として生涯を通じて3800首の短歌と歌集15編、著書7冊を残した小田島孤舟は、歌人としてだけなく、歌集や詩集の編集編纂、さらには岩手を代表する多くの文学者と交流しながら岩手文壇の育成と発展に貢献した。明治17年(1884)小田島孤舟(本名・佐々木理平治)は和賀郡小山田村(現・東和町小山田)に生まれた。尋常小学校、高等科と進み明治35年(1902)岩手師範学校本科に入学、「余韻会」を設立し文学活動に没頭。この頃、新詩社の歌誌『明星』の歌人であり、詩集『あこがれ』を出版した石川啄木を訪ねた孤舟は啄木に「短歌より詩作に向く」と評価され啄木が主宰していた『小天地』に長編詩を寄せている。その後啄木と孤舟は中央歌壇を通じ交流を続け、孤舟にとって2つ年下であった啄木は友人、そして文学の師として影響を受けた大きな存在となる。
師範学校卒業を間近にして同じ文学の理想に燃えていた親友の死に接し、明治39年(1906)孤舟は新任教師として浄法寺へ赴任する。この地で積極的に活動していた句会グループと出会うなどしながら孤舟は明治42年(1909)後の岩手文壇を代表する文芸雑誌『曠野』を発行し、啄木の死に接した明治45年(1912)孤舟は『曠野』18号を啄木追悼号として発行している。
歌人として成長した孤舟は大正3年(1914)浄法寺尋常小学校の校長に就任。私生活では四男三女に恵まれた。しかし、大正9年(1920)11月8日未明、学校の火鉢の残り火から出火、校舎全焼、校長であった孤舟は減棒処分の後、学校再建を待たずして浄法寺を去る。
第二の人生は県立盛岡高等女学校(現盛岡二高)だった。国語教師として赴任した孤舟は大正12年(1923)長らく休刊していた文芸雑誌『曠野』を復刊した。孤舟の自宅は「杉風洞(さんぷうどう)」と呼ばれ多くの文人が立ち寄った。そこは盛岡における歌のと書の聖地であり、後に盛岡書道会、戦時中の大日本書道報国会岩手支部へと発展継承されてゆく。
昭和8年7月、門下生らの手により孤舟の第一歌碑が建立される。場所は高松の池畔・神庭山、碑には「われひとり よのつねびとのみちこえて しづかにゆかむ さびしかれども」とある。歌には人は所詮一人である…という過酷な現実を見据えながら、多くの人の中で人と接し愛した孤舟の生き様が語られているという。教師生活を終えてからは雑誌『岩手教育』の編集に没頭、戦後は多くの短歌集、作詞集を出版。この頃宮古にも訪れている。そして昭和29年第15歌集『中津川』を最後に、翌年脳溢血にて他界。72歳だった。

  • 出典:第34回盛岡市先人記念館企画展「小田島孤舟」岩手歌壇の父ーリーフレット


小田島孤舟と宮古

小田島孤舟と宮古の関係は深い。陸中海岸国立公園指定運動の第一人者であり、生涯にわたりふるさとの海を愛しながら、株式会社文化印刷、陸中タイムス社を設立し本誌をはじめ各種新聞雑誌を創刊した故・駒井雅三(1907~1985)の妻、けい子が小田島孤舟の二女なのである。
駒井雅三とけい子が結婚したのは昭和9年(1934)であり、駒井雅三は小田島孤舟を儀父としてだけではなく、文学、書の師として仰ぎ生涯その影響を受け続けたと言っても過言ではない。 事あるごとに宮古を訪れた晩年の小田島孤舟であったが、昭和29年(1954)娘婿駒井雅三を訪ね来宮した。
来宮目的は今となっては不明だが、その際に雅三の親友であり文学結社を作って活動していたいた盛合鱗児の希望で4張りの襖に8首の短歌を奉書している。のちにこの襖は県議会議員故・盛合總氏の私邸の襖として長年使われたが、私邸改築移転に伴い屏風仕立てに表具表装されたという。8首の短歌のなかで「孤舟」の雅号が書かれた次の歌は盛岡市高松にある小田島孤舟第一歌碑に刻まれている

  • われひとり よのつねびとのみちこえて しづかにゆかむ さびしかれども

この歌は、他の7首は小田島孤舟におまかせしたが、この歌だけはどうしても書いて欲しいと盛合鱗児が頼んだものだという。
屏風を所有しているのは栄町の盛合東彦さん(59)だが、現在この屏風は昨年暮れから1月15日まで盛岡の先人記念館で開催されている「小田島孤舟展(第34回企画展)」に貸し出され、同時に企画展終了後同館へ寄付された。
連作の短歌は重茂半島付近の海を意識したもので大胆かつ、おおらかな独特の筆跡で繊細な海の情景を詠んでいる。この作品が書かれた昭和29年、小田島孤舟は第15歌集『中津川』を出版。孤舟にとって晩年の円熟期であった。そして翌、昭和30年(1955)12月3日、脳溢血のため中津川畔で倒れ、翌日72歳で永眠する。肺疾患で長年闘病生活を送っていた駒井雅三の妻けい子も父の死後から3年後の昭和34年(1959)父を追うように他界している。

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