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宮古弁講座応用編

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家庭で食事をしているときに訪れたお客様との会話もかかせない。

宮古の家庭料理にキツコズル(雉子汁)がある。 この辺りは雉の産地で、冬にはあっちこっちの鉄砲撃ちからよく雉をもらう。 美しい羽を毟って骨でスープをとり、雉肉、豆腐、ネギ、デェーゴ(大根)などを入れてフーフー吹きながら食べている。

オバンデゴゼンス (今晩は) アア、オデンスタ (あら、いらっしゃい) ズァ、カマリッコガエエネンス (おや、いい匂いですね) キツコズルダァデバ、カンネエスカ (雉子汁ですよ、食べませんか) オガメンスナ、スマステケンシタ (お構いなく、済ましてきました) ナアニ、酒コダァノ、ウンメエモンコが入る腹はベヅダァベエスカ (いやいや、酒やおいしいものが入るお腹は別ですよ)

ロバダ(炉端)には、天井から鉄の棒や竹、太い針金などいろいろな細工の鉤が下がっている。 そこに鉄鍋が掛かり、薪、柴などの燃え残りの煙りが漂っている。 ヨゴザ(主人の座所)ネマッテ(座って)いる主人が、カガさん(奥さん)に言いつける。

オイ、ユビイガ、サクペロ (煙いから良く燃えるようにしろ) イェーオドゴサワ、ケムリガイグンダァズーモンネンス (いい男の方には煙りが流れるそうですもんね) 奥さんもなかなかで、ヨス・ハ(おやまぁ)と客も照れてみせる。 鍋の雉子汁も、温まってきた。 オワゲンセ(召し上がれ)と奥さんがオギュウズ(給仕)をする。 ズァーソウスカ、ホンダラ、ヅギナスニイダダゲンス (いやまぁそうですか、じゃあ遠慮なしに頂戴します)

注)ヅギは辞儀(ジギ)で、礼儀作法に通じる言葉。オズギ、オジギは挨拶をする(頭を下げる)こと。ヅギナス、ジギナスは作法抜き、つまり遠慮なくの意味になる。   ヅギ、ジギのギは鼻音のギ(ngi)で、まぎらわしいものにヅグ(度胸)、ヅグナス(意気地なし、弱虫)がある。

それにしても、今夜はスパレル(冷え込む)。 アンカこたつに豆炭とオギリ(薪が燃えて出来た炭火)を足しても、背中がサンビィ(寒い)。 家の中はスギマ(隙間)だらけで、スウスウと風が入って来るし、障子の紙はブッツァゲデ(破れて)いるし、居られたもんじゃない。 コタツにアダリ(温まる)ながら、丹前を引っ掛けるか、ハンツァ(綿入半天)を着るしかないか。

お客が帰った後、主人はひとしきり寒さを嘆いているが、これがひと昔前には普通の宮古の家庭風景であった。

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