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2010/09 全編宮古弁の唄でバンド活動

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 その昔、僕は仲間を集めてバンド活動をしていた。それは元号が昭和だった頃で、各パート個性的な面々が揃っていた。演奏する音楽は根が「セッコギ/怠け者」で「アギヤヅ/飽きっぽい性格」なあげく、絶えず人と違う何かに挑戦するような前衛的面々だったもので有名ヒット曲などのコピーではなく詞も曲も完全オリジナルの音楽を目指した。幸いボーカルとギターを担当した彼がメロディーメーカーで様々な曲を書いてはコンピュータでアレンジして皆で演奏をした。バンドの名前は「潮吹き温泉バンド」。初デビューは温泉を意識して全員旅館の浴衣を着てステージに挑んだ。今思えば若気の至りで「オソースー/恥ずかしい」限りだ。運良く当時の写真もなくステージを撮ったビデオテープも再生するデッキがないからお蔵入りとなって久しい。そんな実験的バンド活動は数年続いたがそれぞれの経済活動の事情から活動は停滞し解散はしていないものの活動休止のまま月日が流れた。

 そして僕も四十の坂を「ツクトレデ/転げ落ち」50の登り口に差し掛かったあたりに、偶然中学時代にバイトして買ったギターと同じ型番のギターを盛岡のリサイクルショップで入手、ここ数年でオヤジ的音楽活動に火がついてしまった。とは言え活動といっても昔のように大きな音のバンド形式はもはや体力的に無理があるので、機材も少ないアコースティックギター二本のフォークデュオとして再スタートとなった。今思えばドラマーで友人だった寅次郎の追悼ライブに出たのが初ステージだから寅次郎に「ヨバレダーノガモ/導かれたのかも」知れない。

 僕と一緒に演奏してくれるのはバンドは違うが若い頃から何かと一緒に音楽活動をしてきた市内在住の先輩。彼とは潮吹き温泉バンド時代に数回やった「東音活動」というライブイベントや、みやこ夏祭りの「鮭だ!ハナマガリ」の制作で作詞、作曲でコラボしていた経緯もあった。そんな二人も老眼だ痛風だと、いい感じで枯れてきて、50代としての自然にふるさとを思う気持ち、そして幾人との死別の悲しみなどを知って音楽的にもぐんと幅がでてきた。今ならギター二本で充分にメッセージを伝えることができそうな気がする。

 当初はお互いの苗字でバンド名にしていたが、さすがに場数を踏むうちにバンド名が必要だろうというので「う°」(うにまる)と決定。現在はふるさと宮古と宮古弁にこだわった歌詞で活動し色々な場で演奏している。そんなオリジナル曲の中に宮古弁満載の歌詞で歌う『スウィングせんすぺす』という曲がある。今月はその歌詞を紹介し徹底解剖してみようと思う。

 この曲は潮吹き温泉バンド時代に宮古弁で一曲作ろう!というノリで冗談半分に作ったもので前半は浜言葉での行商と客の掛け合いを、後半には近年新たに書き下ろした農村風景の宮古弁を追加して一曲としている。前半歌い出しの「エーナサン、オーゲンセ」は「そこのお兄さん買ってよ」、「ケサトレダベーリノ、サガナッコ/今朝獲れたての魚だよ」という意味だ。そこで青年は「ヨゴゼンス、オラガエーモ、キスパマヲヤットレンス/結構です、ウチも磯漁業をやってますから」と掛け合いがあって「オッパヤンタラ、コンゾーカメ/おばちゃんケチだもんねえ」「エーナサンッタラ、ビンボータガリ/なによお兄さんこそ貧乏くさいわね」という感じに訳される。ここで演奏はブレイクして、第二段階に入る。「エーナサン、ソーサベンネーデ、オーモゼンセ、サガナッコ」は「お兄さんそう言わないで買ってよ魚」と行商のおばちゃんは少し弱腰になる。そこですかさず買い手の青年は「ホンダラバ、ペンコデイーケー、ケドガンセ、オッキドゴ/じゃぁ少しでいいからくださいな、大きなやつを」と商売上手に切り出す。そこで商売が成立し「ナンボーソーレ、ナンボーダドモ、ナンボーソーレナンボーデイイケェ/これこれしかじかで幾らだけども、このぐらいでいいから」だって「オラガエーハ、ヒタヅハマ、オメサンガエーハ、スズゲンチョー/私の家は日立浜、あなたは七軒町」、「モドヲタダセバ、オンツァマドースガ、キョーデー/元を正せば叔父同士は兄弟だもの」というオチだ。ちなみに「スズゲンチョー」とは俗称地名であり現在の鍬小の裏付近だ。その昔家が七軒あったからその名があるというがその真意は定かでない。

 後半に入るとうって変わって農村風景の歌詞になる。ある家を訪ねた人が勝手口あたりで「オデーンスターガ、イイカマリッコダガネンス/いらっしゃいますか?それにしてもいいにおいですね」と問いかけると家の人は「キツコズルデゴゼンス、オワゲンセ/雉汁です、いかがですか?」と誘う。「ホンダラバ、イダダゲンス、ネラッタヨーテ、オモッサゲネードモ/そうですかではお言葉に甘えて。狙ってきたみたいで申し訳ありません」とご相伴にあずかるわけだ。ここでお囃子風に「ヤマノカミサマ、ヤンマノカミ/山の神様山の神」「ウマノカミサマ、オソーデサマ/馬の神様蒼前様」「ベーゴノカミサマ、オダマサマー/牛の神様尾玉尊」と唄う。ここからは農村風景を唄った歌詞が続きまたお囃子風に「メグサメンケータナツリケッツノ/意外と可愛いお尻がセクシーな」「タウエノユイトリ、オヘーレンセ/田植えの共同作業にお入りなさい」「ホウノギ、ケーパデ、トリグルミーオワゲンセ/朴の葉でくるんだぼたもち、さあどうぞ」となりここから同じメロデーでシャッフルしながら「カノギズンゾーハ、オスラサマ/桑の木地蔵はオシラ様」「アオタンツポケデ、フケンコウ/青なり瓢箪で不健康」「カスギナガセノ、ノンベーガドーガ、ゴザパダギ/台所係り泣かせの飲兵衛たちが帰らない」そして痛がる子供をあやす怪しい呪文「インボートーレーカーラグマンゼー、ハッタギハネレバ、カラスガヨロゴブ、イデーノ、イデーノムゲノヤマサ、トンデゲー」でエンディングとなる。

 宮古弁を多用する「う°」のオリジナルでも、ほぼ全編が宮古弁で構成された珍しい曲。ぜひ音源化という声もあるが時間とお金がない。そんなわけで我々「う°」を全面サポートしてくれる宮古と宮古弁が好きなスポンサー様を募集中なわけです。よろしく。

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