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2010/05 子供の頃のザッコ釣り

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 遅咲きの八重桜が満開になって田植えも終わる頃になると「アンネーニ/あんなに」寒かった今年の冬のことも忘れて「ツリッコ/釣り」にでも出掛けたくなる。しかしながら僕の場合、釣りと言えば基本的に「メメズ/ミミズ」を餌に「ガンダマ」という噛みつぶしのオモリに四本繋ぎの竹竿でしかやったこがない。大人になってから会社をサボってリールを使った磯の投げ釣りもちょっとはやったがその頃は人の道具を借りていたからやはり基本は四本繋ぎの竹竿で釣りのレベルは終わっている。それでも近年はアウトドア関係の仕事などで知り合った知人たちがルアーだフライだテンカラだと様々な手法で釣りをするのを見て同じ釣りでも色々と「スズラメンドークセー/まったく面倒臭い」こだわりがあることを知った。

 昭和40年代、今はなき小山田の市営住宅あけぼの団地10号棟の「ハスッコ/はじ」に住んでいた僕は四本繋ぎの竿をかついで川、沼、池、堤防、桟橋、岸壁…などなど様々な釣りポイントを「ハッサリッグ/かけずり回る」毎日だった。僕が最初に釣り糸を垂らしたのは団地内の沼だった。この沼は今の小山田宮古市福祉センター前のT字路あたりにあった小さな沼で、現在の薬王堂あたりが一面水田だったから、田んぼに引いた水が集まってできたような沼だったのだろう。沼は小さかったがほとんど無農薬の水田とつながっていたからボウフラから「ザンブリ/トンボ」「オケラ/ケラ」「ビッキ/蛙」から小魚まで生態系は豊富だった。この沼のポイントは当時の職業訓練校の講堂の裏に陣取って沼の西側からご飯粒を餌にウキ釣りで「ギンブナ」を狙うのが最良とされた。釣れるのは5センチほどのフナで釣ったら家に持ち帰り金魚と一緒に「カデル/飼育する」のが流行っていた。しかし、団地から目と鼻の先にある沼のフナはの子供たちに「チョーサレ/いじくられ」スレておりそう簡単には釣れなかった。

 沼で糸を垂らしても単調だし「カニカレル/蚊に刺される」だけだから閉伊川の淀みで「オゲー/ウグイ」を釣ろうとカンカラに「メメズ」をたくさん入れて繰り出すこともあった。学校では閉伊川での川遊びや釣りを全面禁止にしていたが、誰かが行くならみんな賛成だ。行くのは俗称で「ハヅマンガワラ/八幡川原」と呼ばれる付近の対岸で「カリバス/仮橋」あたりの淀みで糸を垂らしたが掛かるのは「ドンブグ/ドンコ?」と呼ばれる茶色の小魚ばかりだった。しかし、この釣りで上級生たちから水中にある「タナ」という魚の生息範囲を教えられ、同時にウキを使わない底釣りでも魚が釣れることを知った。

 釣りに使う道具はミチ糸、ゴム管、玉ウキ、ハリ、オモリをセットしたものを「ミセヤ/駄菓子屋」などで売っていたが、それらは粗悪で糸もすぐ切れるため専門店で買った。しかし釣具店の敷居は高いしなんとなく「ショースクテ/恥ずかしくて」一人では入れない。そのため誰かが何かを買うと聞けばみんなで付いて行った。よく行ったのは「ガイコ/外交釣具店」だが、子供心に「ガイコ」という店の名が不思議だった。ちなみに「ガイコ」は昔のカフェー(昭和初期の飲食店)で社交場という意味の「カフェー外交」という店名の名残だという。

 「フナバ/新川町」のJR山田線閉伊川鉄橋の下はハゼ釣りの名所だった。ハゼは天ぷらで美味しいと言われたが、子供だった僕たちにとってその味などどうでもよく、皆が竿を出すなら「オラモヤリテー/自分もやりたい」という衝動であった。ハゼ釣りの餌は南町の排水が閉伊川に流れ込むあたりで採れるカワエビだ。当時は南町もほとんど田畑で民家が数軒あるのみだったから水もきれいだった。

 旧宮古橋から下の閉伊川河口の岸壁では「セニツーダ/瀬に付いた・産卵期となった」「オゲー」の別称「アガハラ/赤腹」を狙った。餌は「メメズ」か「ハンカワギ/半分乾いた」のスルメの「フ/肝」だが、最もクイがいいのは「ハラコ/鮭の卵」だったらしい。しかし、子供が入手可能なのは「メメズ」か、せいぜい頑張っても岸壁に山積みされた魚粕に沸いた「ヘーノゴ/ハエの子・蛆」ぐらいであった。しかも大人でもアワセが難しく「アガハラ」を釣れる子供はほんの僅かだった。勿論、僕にはハードルが高く釣ったことはない。その代わり、閉伊川河口では「メメズ」でチカを釣った。チカはワカサギに似た小魚で簡単に釣れて楽しかったが家に持ち帰るとあまりいい顔はされなかった。ちなみに現在のチカ釣りの主流は疑似餌で釣るサビキという仕掛けだが、昭和40年代はそんな仕掛けはなかった。

 夏になると1万トン岸壁や、藤原須賀と閉伊川を仕切る防波堤あたりでサバが釣れた。サバ釣りの餌は釣ったサバの切り身だ。防波堤で誰かが釣って捨てたサバを拾って「エンペズケズリ/鉛筆削り」のナイフで切ってエサにした。サバは湾内を河口付近経由で回遊しており、イレグイ状態になったりまったく釣れなくなったりした。そんな間が耐えられなくなったら岸壁の隙間にエサを垂らして「クズナガ/メロウド?」や「ガニ/カニ」を釣った。噂では岸壁の隙間にはウナギもおり、ウナギを釣ったら高く買ってくれる店があるという話だったが真相はわからない。

 サバ釣りの帰り閉伊川河口ではじめてリールでの釣りを見た。釣っていたのはボラで、リールの投げ釣りによるガラガケだった。大きくしなったプラスチックの竿から円錐のオモリが10メートルほど飛ぶ様を見て凄いと思ったけれど、それはもう僕の思っていた「ツリッコ」ではなかった。それからも僕は四本繋ぎの竹竿を愛用し転校先の千徳で太田の県公舎前にあった池や、閉伊川第二堰堤あたりで鮎のドブヅリをやった。そしていつしか四本繋ぎの竿はなくなった。「ナゲダ/捨てた」のか「ブッカスタ/壊した」のかも記憶にない。

懐かしい宮古風俗辞典

にだくせー

目的の物とそっくりだが別物。似ているが偽物臭いという意味か。

近年世の中、やったもん勝ちみたいな風潮となりました。こうなると真面目にやってるのも馬鹿らしくなってしまい、売れれば買った人のことなんかどうでもいいぞ的品物が増えて量販店の棚には「ニダクセー/似ているが別物」商品が並び消費者は混乱します。混乱するだけならいいのですが価格的にも本家より微妙に安い値段に騙されつい購入してしまうものです。しかしながら買い求める方が最初から「ニダクセー」商品で納得することもあります。例えば「オグヤミ/弔問」の香典袋などどこのメーカーのものでもよく無理してメーカー品である必要はない。また、「フングラゲース/捻挫」や「コスヤミ/腰痛」で貼る膏薬など「ハッコクテ/冷たくて」気休めになればメーカーなどさほど気にしないものです。しかし世の中には、はなから人を騙すために作られた商品もあります。それらは一流商品の名称を一文字だけ変えたりして類似コピー品でないことを主張しますが、やはり根本は「マネカズ/真似」であり悪意見え見えだったりします。そのてん本誌はどこの真似もしておりません。残り数頁ですがご安心してお楽しみください。

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