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河童

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宮古の河童伝説

柳田国男は著書(柳田国男全集)の中で河童とは水に関係する神が零落したものであろうと記している。現在のように生活の中に水道設備がなかった時代は水は人の暮らしの中で大切な生命線であり、家の中で水を使う台所や井戸には水神を祀ってその恩恵にあやかろうとした。また、河川改良工事などがまったくなされていなかった頃の川やその支流は、現在よりうっそうと樹木が茂り、うねうねと流れ、川の至る所に淵や淀みがあった。そのような不気味な場所には危険を促すための怪物の伝説が語られうことが多く、河童などの異形の妖怪の目撃例を伝えた伝説が多い。
宮古における河童の目撃話や河童にまつわる伝説は市内各地に残っているが、河童が川の妖怪で人に悪さをしたり、川で仕事をする人を流れに引き込み尻玉を抜くというものと、陸に上がった河童を捕まえて証文を書かせるといったものがある。前者は子供たちに川での危険に対する戒めと、水死人の尻穴が開いているため、河童がこれを食べたというこじつけが発生の所以であろう。後者は沼や川の近くに馬を繋いで仕事をしていると、河童が馬に悪さをして馬につかまったまま馬屋で人に見つかるという例が多く、必ず河童に詫び状の証文を書かせている。これは河童が水に関係する精霊であり、火事、火災に対してその禍を防ぐと信じられていたため、火伏せの伝説として残されたものだろう。
宮古での河童の目撃例は様々あるが、まとめてみると「頭が平ら」「顔は真っ赤」「刃物におびえる」などがあり、出没した川は閉伊川などの大きな川より各地区を流れる小さな沢や小川の方が多い。また、特殊な例では、河童が時々家の中に入ってきたという石浜地区の例もあり、これらは座敷わらしなどの家の精霊にも通じるものがある。
現在、これらの伝説や口伝が一般の家に残されたものはほんの一部であり、そのほとんどが生活様式の変化と町の近代化により消滅してしまった。それらは自然と人間が対等に共存していた時代には非科学的な伝説ではなく、人々は「もしかしたら……」という疑心を抱きながらも、暮らしの闇の中には異形の精霊が存在することを認めていたということである。

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